三十三回忌/tomtom_poem
 
映画「殯の森」で、山間のグループホームを訪問した僧侶が彼に言った。
「奥様が亡くなられてから三十三年になります。
死後三十三年たつと、その方は仏さまになられます」
認知症の彼は森に入り、三十三年ぶりに妻と再会し踊る。
――そのとき、犠牲にされるものがある

一九七七年を思ってみる
三十二年前は一九四五年であった
つまり、この年は多くの戦争犠牲者たちが仏になった年なのだ
本土の大空襲の死者たち
沖縄戦の死者たち
広島・長崎の原爆による死者たち
飢え死にした少年少女たち

それは今から三十年前のこと
仏になった方々は
天国でゆったりと踊っておられるだろうか
シベリウスの「悲しきワルツ」のような
悲劇的で優雅な踊りを

それを思うとき
我々は、その「犠牲」の意味を
どのように考えればよいのだろうか――



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