まだ書けない/朝原 凪人
配られた答案用紙
並んだ難解な問題も
複雑な方程式で
幾つかの整数で回答できる
だというのにわたしは
まだ書けないのでいるのです
用紙の右上区切られた四角の中
使い慣れたはずの言葉
試験時間はあと何分でしょうか
わたしはまた書きかけの文字を消します
紙の繊維が削れしかし黒鉛は沈着して
机の質感が伝わるようになっても未だ
用紙は千切れ残ったのは大きすぎる余白
そこに書くべき言葉をずっと探しているのです
問題に対する解答などではなくて
かすみに漂うわたしの名前
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