「だらしないイカ」/ソティロ
 
だらしないイカ





 春の日曜の昼間、あまりに暇だったので自転車に乗って出かけた。家から続くゆるい下り坂のカーブを車輪の転がるままに任せて下る。晴れていて、潮っぽい風があたたかく髪を撫でる。とても良い春の一日だった。海が見えると水面が光って眩しくて、見慣れた水平線も、こんな日には俄然素晴らしいものに思えた。
 海水浴場に着くと、なぜか人が多く賑わっていた。よくよく砂浜の奥のほうをみていると異常な物体が打ち上げられていた。
 異常な物体はイカだった。異常なイカだった。どう異常か、というと、大きさが異常だった。港にある漁船よりも大きかった。間近で見ようと、自転車を堤防に停めて階段
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