停留所家族/霜天
 
その広い丘にはドアがあって
朽ちかけたドアだけが、ひとつ、あって
その横で佇んでいる、家族だった影が
心を裏返すほどにゆるしたかったものは
自分たちだけ
だった
 ドアを開けると道が広がっている
 いつまでも続く道が広がっている
停留所の隣にて
私たちは家族だった
四人だった
毎朝同じ顔が並んで
運ばれていくその隣で
私たちは家族だった
馴染の顔が消えて
新しい顔が戸惑っても
私たちは家族だった
そうだった
 広がった道は途切れることもなければ
 どこかへ繋がっていこうともしなかった
音は途切れないから、と
父がオルゴールを買ってく
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