いっしょうしあわせに暮らしてください/床野トイツ
 
にちようびのまひる
夜勤から帰ってきた母が
茶碗を洗っている父に
仕事の愚痴をまくしたてている

母はこのあたりでは聞かない
すごみのある口調でしゃべる
南のほうの言葉だと聞いた
なにげない会話も
知らないものにはケンカに見える
そんな土地で母は育った

卓袱台から祖母が
吐き捨てるように言う
「あんたたちはまったく
 ワレナベにトジブタだね」

どういう意味 と母に尋ねると
「いっしょうもつ夫婦ち言うことや」
ニッと笑った

おもわず父の顔を確認すると
「いいからはやくごはんを食べなさい
 おまえはお茶をついであげなさい」
ふたりまとめて追い払われた

なんでけっこんしたのと
こどものころからなんどもきいたけど
本人たちにもわからないのだと
さいきんになってようやくわかった

おとうさんおかあさん
わけなんかわかんなくたっていいよ
いっしょうしあわせに暮らしてください
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