若き詩人の手/yo-yo
してくれることがあるでせうかしら、
してくれると嬉しいんだがナ。
「詩人としてはそんなに人から愛誦をうけることは未だあるまいといふ、誰でも持つ初期の心配をたくさんに持ってゐた」。
だが、
「彼のきれぎれな、美しいとも書き現はさなければ当らない溜息が、後の詩人達の溜息にかはって影響をあたへてゐたことを思へば、ラジオで放送される程度のあやふやなものではない、年若い愛誦者の一人づつに幾日も彼の詩はついて放れなかったし、それが詩技のもとになって後代の詩人達をやしなってゐることは……」
それは僕のせゐではなからうと、道造は照れて言うかもしれない、
と犀星は回想する。
その時はすでに、道造は天国の人だった。
そして、美しい溜息だけが残った。
しづかな歌よ ゆるやかに
おまへは どこから 来て
どこへ 私を過ぎて
消えて 行く?
……
(『優しき歌』より)
昭和十四年二月、第一回中原中也賞受賞決定。三月、二十五歳で死去。
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