月が死んだ理由/
朝原 凪人
姿を現した下弦の月は
その身に赤いワインをなみなみ湛たた()え
少しずつ傾けながら一滴二滴
色の無い世界が浸るまで
あの子の涙が染まるまで
夜の終わり色を失くした月高く
空に空(から)の月見上げて人は嘲笑う
なんと空々しく空しい様かと
人は知らぬ彼の色
あの子は未だ夢の中
光溢れる太陽が世界を鮮やか染め上げて
穹の端白き月最後の一滴世界に注ぎ姿消す
人は言うなんと月の小さきことと
誰も知らぬ彼の色
あの子の涙を除いては
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