孤立ドールシャウエッセン/カンチェルスキス
 
だけ言うと、店を出て行った。マスターが戻ってきたのは、二日後だった。無糖のブラックコーヒーを持って帰ってきた。もちろん缶だ。ちょうどおれは砂磁石を口のまわりに塗って髭に見立ててるところで、パッと見じゃ冬山に遭難したような雰囲気だった。捕まえてきました、無糖ブラックコーヒー。マスターが言った。あれほどサイズの大きかったしゃもじが手のひらサイズになるまで欠けたり朽ちたりしてた。誰かが吐き捨ててこびりついたガムや我有限命由美愛死天留と筆書きされた文字も消えてしまっていた。ああ、やっと捕まえたか、ほら、見せてくれよ、おれは言った。マスターは疲れた顔で差し出した。UCCの自動販売機で売ってるやつだ。おれはこ
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