孤立ドールシャウエッセン/カンチェルスキス
いことじゃないか。歯間ブラシは手に入らなかった。
なぜ自分が孤立してるのかはあっさりわかった。おれは喫茶店にいた。いちばん奥のテーブルに座った、と言っても、カウンターしかなかった。だからおれはカウンターの隅っこに座って、風力発電に利用できそうなほど大きなしゃもじを持ったマスターに大急ぎで無糖ブラックコーヒーを買ってくるように言いつけた。缶ですか?と訊くから、とりあえず缶だ、とおれは答えた。マスターは走って出て行こうとした。おれは呼び止めた。なあ、そのしゃもじはいつも持ってなきゃならないものなのか?とおれは訊いた。これですか、とマスターは言った。最近、暖かくなって羽虫が増えてきたでしょ。それだけ
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