「バスが毎日やってくる」/「3つのラテン語の祈り」ほか//南 広一
ていく胸をなでおろすように
あと少しでローンが終わる隣の車をこっそりと掃除する
銀色のファミリー向けワンボックスカー
幸いなことに隣家は「モノより思い出」に共感している
というわけではなかったことに ホッとする
ついでに
気味が悪いくらいに うつむいてみる
これに乗り遅れたら最後だった
「もっと
ナチュラルに語れないものだろうか
アニエス・ヴェルダの冬の旅のように」
バスは
横たわる青と赤の血管を踏み越えて一線を越える
生命活動の最北限であることを誰も知らない
窓の外はどうか仮説であってほしいと願う
殺された窓には一向に注意を払わない
[次のページ]
戻る 編 削 Point(5)