Vagina/shu
 
もうなんだかざわざわして落ち着かない
歪んだ時間の森が襲ってくる
変てこなトゲトゲのある触手のような蔦が
足元から競りあがって絡みつく
おっぱいのような房の垂れた樹が
白い樹液を吐き出している
地面から失われた顔が淋しげに浮き出てくる
ちいさい息子が泣きべそをかきながら包丁を持って
靄のかかる深い森の奥に駆けていく

おとうさーん
おかあさーん
どこにいるの

大好きなおまえが妖精みたいなおまえが
素肌の透けた薄い衣を羽織って
淫靡に笑ってアタマを擦り付けてくる
オレはなんだかはあはあ息苦しくて切なくて
逃げ出したくなる衝動に歯を
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