スピードについて/大覚アキラ
水の流れのはじまるところを想像していた
爪でつけた引っかき傷の薄くなって消えていくのを見つめながら
それはスピードについて考えることにとてもよく似ている
夕暮れはいつもゆっくりと訪れたかと思うと
油断した一瞬にスイッチを切るみたいにあっけなく終わる
それもまたスピードと深く関わっている現象なんだ
そんなあたりまえのことさえも
きみはつい最近まで知らなかったんだ
それは罪ではない
知らないままでいい
きみは知らないままでいいんだよ
そうさ
水の流れのはじまるところをきみは知らない
爪でつけた引っかき傷の薄くなって消えていくのをきみは知らない
そして
それは罪ではない
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