渡辺によって/水町綜助
 
隣のWによって名付けられた半月が
水溜まりの中の夜を
割れながらくりぬいていた

   *

  夏の水門に置き去りにされた犬が
  鼻をなめて
  水の流れを嗅ぐうちに
  錯覚を始めるはやさで

鼻を鳴らした

  犬「改札口のまえで
    僕を待っている
    かっぱの像が
    うみを背にして」

   *

ローライダーのチャリンコが
チカーノに蹴ったくられながら
しゃあ ぶき
と 走り抜け
水鏡を割るさまに
重油のうみをおもえば
Wは唾を吐く
白い泡が口角に残って

W「バイト してみようと
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