ある雨の日より/もも うさぎ
「序」
万華鏡に
甘い想い出だけを そっと詰めて
くるくるまわして のぞきこむ
金平糖のじゃれあうような
さらさらした音がはじけて
あまりの甘さに 歯を痛めて 目を空にやれば
突然の雨に きらめく雨粒は
同じように さらさらと 鳴って
「うみ」
茶器を愛でるように
ひとは壁にそっと触れて
撫でて 眺めて
ほほう とひとこと ため息をついて
これはいい境界線をお持ちですね
と、繰り返される言葉の折に
曇りの海には小雨が降って
そっとその境界線を溶かして
[次のページ]
戻る 編 削 Point(48)