恋に焦がれて啼く蝉よりも/あずみの
 
満天の星空から舞い降りたのは
優しい淡い恋の炎でした

柔らかく瞬きながら
山奥のひっそりとした水辺を
泳ぐように飛んでいました

「わたしたちは人知れず
ただ恋情を募らせているだけなのに」
彼らはちかりちかりと囁きました

「わたしたちにもほんの少し
その情熱を分けていただきたいの」
心醒めた人間はそっと呟きました

薄緑をしたひかりは
つい、と飛んでは消えまた灯り
今を限りとただ想いを燃やすのです

熱を持たない彼らの恋の炎は
それゆえに闇夜を焦がしていました

いのちを燃やし尽くして彼らはやがて
再び夜空へと還ってゆくのです
星空は今夜も降り注がんばかりに
どこまでも美しく輝いていました

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