思い出す/はじめ
世界は止まっているんじゃないかと思う ラジオをつけてみる よかった 世界は動いている
灯りは消灯だけだ ブルーメタルのMDコンポに浮かんでいるデジタル文字が網膜に焼き付く
世界はラジオを通して静かに囁く(僕がボリュームを下げているだけなのだが)
突如思い浮かんだ港町の記憶が僕をしどろもどろにさせる
世界の声には上の空で 僕は潮の香りと熱風を思い出し じっとりと汗を掻く
冷えた布団に潜り込み 体を冷やす 僕はキリスト教信者の詩を思い出す
あんな詩を僕も書きたい 下へ降りてパソコンに向かい 彼の詩の真似をして書いてみる
切り裂かれた暗闇と静寂が僕には優しい 誰が切り裂いた
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