雨バス/船田 仰
 
たいがい湿っぽいバスに乗り込んで
傘の位置が共通語になったゆうぐれ
雨が
ただのラインになってそれ以上の意味をなくす
空間を取り囲む赤いランプを押すのには
タイミング、ある
スーツもストリートも線の集合で
ぽたぽたとすべりおちる音がする
ハイヒールのよろめきじゃないとは言い切れない
ブレーキに餌付けしてもっとおちつけと言ってください
運転手さん
そして当たり前にバス停にたたずむ
バスたちのせきばらい
学校の朝礼遅刻してこっそりまぎれるみたいに
こっそりたたずむ
だけど校長のはなしを聞くひまもなく
バスはまたラインになってしまう

どこもいろんなラインばっかりで
たまに酸素を疑うよ
街路樹にふりそそぐ粒々の雨が
くだけては
移動しつづけるもどかしいもの
とおりすぎても気付けないでいる
バスを見送って
ぼくはただのラインになった
傘がそれ以上の意味をなくした
もう晴れだった
それでも晴れだった


戻る   Point(7)