302号かんじょうせん/水町綜助
ちの近く走ってたあの広い通りだよ
あそこいまは変わっちゃって
防音壁が銀色で囲っちゃってるけど
おまえがいたころは何にもなくて
道の両側が開けた空だったんだ
地方都市のベッドタウンだから建物だって低いから
そこを走ってると西の空が流れていくのが見えて
それがつよい風でだんだん青と橙にぼやけて見えてくるんだ
そのころなんて今よりもぼんやりしてたから
おまえのところまで行く途中道に落ちてた鉄線にひっかかって
ジーンズも破れて足に怪我したよ
まだそこだけは白いまんまなんだ
怪我っていやだよ
跡が残る怪我と
残らない怪我の違いって何なんだろうね
だって生まれ変わるって言うだろ
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