馬車/三州生桑
 
何学部なのか分らない
それから登校する度にその馬車に乗る
卒業して、彼女と連絡がつかなくなる
男に尋ねると、腹立たしげに答へた
「あの娘はすっかり変はってしまったよ。もうこの馬車に乗ることはないだらう。この馬車を見つけることすら不可能だね」
絵描きの女も哀しさう
「自分のやりたいやうに生きようとしないからさ」
私はしばらくの間、馬車を見失ふ
久しぶりに「月の光」を聞く
振り返ると馬車が停まってゐる
美少年の御者は淋しさうに「あなたはもう乗れません」と言ふ



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