余剰の海/水町綜助
―半眼 仰向けにソファからガラス棚の中へ
帆船模型の帆が擦り切れる様を想像して、視線を窓外に移せば
季節の欠片がもろもろと崩れながら天気雨に縫い付けられていくところだった
中庭の、陽の当たらない黒土の上に一粒ごと
砕かれたしゃぼんの油膜が春として死んでいく
うしろ姿ばかりきれいに見えるのは
いつも眠ってばかりいたからだろう
夏を迎えるとして
長い時間をかけてやること
生命が長い尾羽を引いて
夜の先の方に吸い込まれていくばかりの季節に
「そのながい羽を一本千切って欲しいんだけど」
と呟いたら
小さな悲鳴
暗転
そして
ぼんやりと
照明
手にした羽
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