もうすぐ六億歳の妻/楢山孝介
するしかない
あ、一つ思い出しました
当時の夫が獲ってきてくれたことがありました
その、恐竜って今では呼ばれてる生きもの
夫は大変な怪我をしていました
鳥の親戚とか言われ始めてるから
結構美味しそうなもんだけど
どうだったの
よく覚えてません
美味しかったら覚えてるかと思いますけど
その頃は身体を悪くしていて
何を食べても美味しくなかったものですから
そんなものか
遠い昔の彼女の夫に少し同情した
僕が作る料理の数々を
妻はいつも美味しそうに平らげてくれるので
(彼女は料理が苦手)
妻の六億歳の誕生日には
彼女にも覚えられそうな簡単な料理を
何億年か前の哀れな男にも乾杯しつつ
美味しく食べることにしよう
鶏鍋でいいかな
美味しければ何でもいいです
はいそうですか
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