カフェにて/渡邉建志
 
んてなかったのだ、動くものをみると押さえたくなるのが彼らの本能なのだ、と思いながら、どうして僕は途中で止めてやることができなかったのだろう、松子さんを途中でしかって止めて、蝶を逃がしてやることもできたのに、と自分を責めた。自分を責めても蝶は死んでしまった。

仕事にひと段落着いたさなえさんが、カウンターから客席に回ってきて、蝶はどこ、と言った。動かなくなったので、店においておくわけにもいかないから公園の植え込みにおいてきました、と言った。さなえさんは松子さんになにか話しかけていた。僕はまた進まない本を読み始めた。
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