かなちゃん/ひろっち
 
海のにおいが、僕の頬を伝っています。
秋の御日様は雨上がりのコンクリートを照らしています。
途中、後輩(地頭江くん)がコチンコチンのオキアミを潰してくれました。
僕は今、十年ぶりに竿を垂れているのです。



おさかな釣れるといいね。
と、
会社の先輩(坂田さん)の娘かなちゃんが言ったので、
そうやね。 と、視線をそろえて言いました。

かなちゃんはアトピー性皮膚炎で顔が真っ赤に腫れています。
鼻水垂らしながら無垢な笑顔でお父さんの後ろをウロウロしています。

おとうさん釣れないなぁ、おとうさん釣れないなぁ、
(さかな見たいな、見てみたいな)

釣れな、
あっ
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