変らない雲/赤月 要
 
変わらない、と


思っていたのは〈雲〉でした




大切にしていた「かたち」は
吐息ほどの微風で
変わってしまう程度のもの

アドレナリンが放出すれば
入道雲のように
高くそびえ立ち

絶望すれば
川を氾濫させるほど
雨を降らすものでした



《昔はこんなに綺麗な色だった》
宇宙の蒼と綿菓子色の白
のコントラストが

天から裾野にかけて
まるでラピュタのように

でもそれは
消えかけたセピアの写真に
残るだけじゃあないか





変わらない、と思っていたのは
私だけ
永久を望んだのもたぶん
私だけ


真っ青な空には
あの日の雲なんて
もう何処にもなかった



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