夕張の花嫁/池中茉莉花
焦がして ひっくり返り
起きあがっては 両側の ゴヅゴヅの壁にぶつかって
「おっかあ」「巌〜」と叫びながら
かすかな光だけを探して さまよっていた
すでに道は燃えていた
抗夫の体も焼けていった
体中、真皮の下の組織まで
深く 深く 火が浸透し
かろうじて 息をしているだけ
それでも 生命は尽きていたのか
その問いは 炭で塗られたまま
火攻めの上に 新鉱は
水攻めを 行った
あの中に みち子さんの旦那さんが いたのですね
あなたは一人で写真屋に行った
薬指に指輪をはめて
夕張もほほえんだ
ふたりの結婚写真をうけとりに
あの日からあなたは眠っている
セロトニンを奪われて
それでも あなたはあの人とともに
生きつづけている
夕張の涙を流しながら
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