夕張の花嫁/池中茉莉花
みち子さん 私は忘れない
あなたの白無垢が 石炭色に染まった日を
あの日 あなたは
彼といっしょに 旭岳のてっぺんに たどりつき
おにぎりを広げたときよりも
もっと高い山の頂にいた
そう、マッカリヌプリの頂に
スキーをかついで登った山も 彼となら
何も重くはなかったのだから
たとえ 塊炭1トンかついでも
もう これからは 2人で走れるのよ
軽やかに
でも あの日 彼は帰ってこなかった
新鉱が爆弾と化したのだ
私は子どもだったけれど 覚えています
はっきりと
炎の中 炭で真っ黒の人々が
ホースのような坑道を
体を焦が
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