忘れ物/ぽえむ君
 
各駅停車しか停まらない
その駅のベンチに
ふと置かれた本が一冊
鞄に入れたつもりが
入らなかったのだろう

風でページがはらはらと
少しだけ浮き上がる
どこか心地よさそう

急行列車が通過して
ページががたがたと
どこかおびえてる

落とし主は
忘れ物に気づいていないかもしれない
気づいたとしてももう来ないだろう
次の本を買ってしまうかもしれない
忘れ物を忘れてしまうかもしれない

誰かの忘れ物を覚えている自分が
ここにいる
戻る   Point(9)