「悲しい夢を見たあとに」 (青年詩片)/ベンジャミン
 


悲しい夢を見たあとに
声を上げて泣いてしまったのは
その夢が悲しかったからではなく
その夢が現実にほど近い
記憶だったからかもしれません

昔のことですから
もう数えきれないくらい繰り返して
記憶もすり減っているはずでしょうに
やたらと鮮明に見えてしまうのは
もしかしたら
悲しむために泣いているからかもしれない
なんて思えてしまいます

まるで
悲しい夢がいつの間にか
悲しむ夢に変わってしまったかのように

けれど
飛び起きた後に一瞬周りを見わたして
自分が何処にいるのかわからなかったり
とっさに押さえた胸の鼓動がもう
手のひらを突き破りそうなく
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