「幸福の定義」/和 路流(Nago Mitill)
 
 この豊かな社会でヒトは、
むしろ 自分を殺したり、他人を殺したり、するのだろう。
死が ありふれた社会では、生が望まれ、大切にされるように。

いつから僕らは、幸福が どこか遠いところにあって、
ここには無いのだと、そう思うようになったのだろう。
いつから僕は、心を満たす糧を空しくどこかへ追い続ける、
無いものねだりの人間に、なったんだろう。

どこかで分かってるんだ。
何を手に入れても、どこを探しても、
心を満たす手段など、この世界のどこにも見つかりはしない。
僕は、いつまでたっても幸福になんてなれない。
自分が幸福だと、自分でそう思えない限り。

無いものねだりなんだ、僕らは。
物に満たされた社会のなか、本当に大切なもの どこかへ見失ってしまう。
幸福になるためのすべが、初めから ここにあること、忘れてしまっている。

幸福の定義は、常に自分の心に依存しているんだ。
僕の心を満たせるのは、僕の心でしかない。


                (2007年・筆)
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