足音/池中茉莉花
 
本一本針を刺し
    「まだ聞こえるか」と怒鳴り散らした
    あなたは それを繰り返されたが あなたの耳には はっきり聞こえた
    だから 答えた 「聞こえる」と
    まっさかさまに吊されて 足の先から頭へと 体中の血が 溜まっていった
    血の気のひいた その体を 鉄の棒で 来る日も来る日も 滅多打ちにされて

こっぱみじんに砕かれて 飛び散った
肋骨の破片たちが
あなたのまあるい魂を
暴れ狂う ハリネズミに 変えてしまったのではないのですか

今、うつろな意識の中で 折れた跡だらけの肋骨だけになってしまった胸に
あなたが まだしっかりと 抱きしめている
この茉莉花の耳にも 聞こえるのです
日々 音量を増してゆく
あなたがきいた 戦争の「足音」が


起きあがって もう一度
一緒に 叫んで
ね、 おじいちゃん

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