ない/山中 烏流
 
カーテンと
鉄骨の隙間から覗いた
スカートを捲る
そこに、秘密はない
 
白く染まった床と
天井の間で眠る
ストッキングを破る
そこにも、秘密は見当たらない
 
 
ステンレスの扉を開けると
生暖かい風が
頬を撫でた
 
そこには意味すらなく
また、私の必要性も
なかった
 
 
アンテナの立たない
携帯電話を
川へ投げ込む
 
鯉が飲み込んだ
飲み込んで、しまった
 
 
 (今はもう、ではなく)
 (最初から)
 
 (ないのかも)
 (しれない)
 
 
古ぼけたマンションの
はじっこのドアを開けて
中を見た
 
ただいま、と呟く
そこに
 
私は、
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