ノート(おもい おもい)/木立 悟
 


口に重い想いをひとつ
あなたの口に移しても
もっともっとと欲しがりつづけて
想いは軽くなるばかり
想いは薄くなるばかり


あなたが書くものが詩であるなら
わたしが書くものは詩ではない
けれどもわたしが書くものが詩でも
あなたの書くものは詩であるという


それなら
わたしは
いなくてもいい


あなたが書くものが百年読まれて
そのあとでわたしが一年読まれて
そして人が滅びるのだとしても
わたしのせいにしないでほしい


あなたのなかのよどんだものを
わたしのなかに移しても
もっともっとと移したがるので
わたしは重くなるばかり
わたしはどうでもよくなるばかり


つづいてゆくのは
あなたとあなた
どこまでもおなじ
あなたとあなた


それなら
わたしは
いなくてもいい










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