仏壇/さかな
 
仏壇を買おうとずいぶん前から決めていた。物も決めていた。漆でできた小ぶりのものだ。新築祝いに、母と妹、そして義弟からもらったお金でそれを買った。
 いまでは、大事なものは、そこに置く。子どもの抜けた歯、当選した千円の宝くじ。お守り。大吉が出たおみくじ。夏に行く予定のスパリゾート・ハワイアンズの利用権。来週行く予定の宿泊先通知書まで。そこに置くと安心なので。「おじいちゃんのところにおこう」何か出てくると、そこに置く。いつまででもないけれど。
 北海道に帰省した折、まだ存命だった祖母に、仏壇に置けるようにと、マッチの燃えさし入れを買ってもらった。祖母の仏壇にあったものがとても便利できれいだったからだ。祖母は私がそういうものを欲しがったことを喜んでいた。
 仏壇にあって便利なものがあるなんて、その年になるまで興味もなかった。しかし、家にあるものになると、灰をかきまわす小さな灰かきも欲しくなる。小さなものだが、あると便利なものを。
 

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