遺書/Utakata
のを想像するとどことなく不気味な、そんな音楽室のピアノに似ている。君は小学校の音楽室なんて、まだ覚えているのかな。
君の事だって、もう色々と忘れてしまった部分が多いのだけれど、たった今君の眼のことをふと思い出した。君の眼。色素が濃くて、黒目がちだったけれど微かに斜視を持った君の眼。右目と左目で向いている方向がわずかに違うその眼のせいで、君が僕を真正面から見つめるとき、いつも僕はどこか落ち着かない気になったんだ。僕がそう言ったらきっと君は怒ったろう。君自身はちゃんと僕のほうを向いているのだと向きになって反論しようとしたんだろうね。結局そのことは言えずじまいだったけれど、君の眼はいまもそんなふ
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