石と米と月の色/麻生ゆり
 
 庭にあった軽石が
 私に話してくれました
 「私はほとんど変わらない
  雨が私を穿っても
  風が私を削っても
  私はわずかに欠けるだけ
  欠け続けながら今にいる」
 人も案外そんなもん

 米びつの中の新米が
 私に語ってくれました
 「私はいろいろ姿を変える
  花であり実でありそして今
  私は飯になろうとしてる
  しかしその後の私の生は
  どうなるのやら解らない」
 人にもそんなの解らない

 窓からのぞく満月が
 私に教えてくれました
 「私は絶えず変化する
  時には全てが満ち足りて
  時にはまったく何もない
  しかし止まらず変わっても
  そこに私はあり続ける」
 人もそれならいいけれど
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