兆し/yoyo
 
父のときもそうだった
まるでネコのように
死ぬ前に片付けをはじめる
「死んでしむようで嫌だ」
といったけれど
伯母と母は部屋を片付けた
寒い冬の真夜中
誰も知らずに
息をひきとって

帰らぬ人を待ちわびるのか
生きているようで
目を覚まさないかと
何度も呼びかける
「お母さん、お母さん」
ネコは冷たくなった母が
わからないでいる
無頓着なあたしと
几帳面な弟と
冬にさらされて
戻る   Point(6)