朝の静かな領域/村木正成
 
君が勢いよくカーテンをあけるから
まさに零れ出ようとしていた光が
勢いよくぼくを包み込む
その白い肌は朝に満たされて
なんて君を美しくさせるんだ
たった今ぼくのなかも
朝が通り抜けて行ったよ

ぼくの眠気は朝食の
珈琲のなかに流れ着くようだ
トーストのなかにバターが
ほどけてゆくように
風はあたためられたミルクのように
僕たちの横をなめらかに通り過ぎる

朝露にぬれた蜘蛛の巣に
吸い込まれていく光はまるで
子供のころに見た万華鏡のようね
って君が言ったように聞こえたのは
ぼくのそらみみだろうか

君の不思議そうな顔が
珈琲のなかに反射する
ぼくも同じことを考えてたんだ
ぼくたちはもしかしたらこの窓から
飛びたてるかもしれない

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