淡々と、港にて/リスト
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粉粒のかさなりに 星の交差する夜空がうっすらと悲しい港の空、その真下では、向島の灯りが瞬いていて、今夜も、静かに波うつ海面に溶かされた月が這いまわっていることにも気づかずに、耳をふさいでいる細いコードにつながれたまるい物体のいくつもの穴から、フィオナアップルの情熱的な歌声とピアノの旋律がのしかかってくるので、絡みあっていた神経もほどけあって、ひきはなされてしまった失望は頭上からはばたいていったみたいだから、まぼろしの花びらが咲いたようで、くちびるに少しの傷がついたことにたいする切なさは虚しく
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次に夜明けを待つのが辛くなった時、おれはニューエイジミュージックを聴くだろう。耳
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