人々との距離/いねむり猫
私鉄の午後のホームで
年老いた夫婦が楽しそうに話をしている
けだるそうにゆれて動き出した下り電車の中から
二人の柔らかな会話を もう少しだけ見ていたいと願う
40年も50年も連れ添った後でも
お互いの目を見交わしながら 楽しげな会話が続くことの幸せ
ホームの端の喫煙コーナーでは
背中を丸めた男たちが どこからか逃れてきたように
時々周囲に目を配りながら 互いの距離を気にしている
その中で、すべてを切り捨てるように
煙を吐き出す さっそうとした女性の姿がかすめる
ホームが見えなくなった電車の窓
午後の傾いた陽射しの中で 自分の顔を映そうとしてみる私は
自分には何の表情もないことを知っている
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