夜霧のバイオリン弾き/村木正成
夜霧のなかのバイオリン弾きの
奏でる音はどこかもの悲しい
それは夜霧がそうさせるのか
それともバイオリン弾きが
そのように弾いているのか
グレタ・ガルボは
実はフランス政府の
女スパイだってさ
夜霧のなかに
答えを見出そうとしても
無駄なことだった
夜霧のなかのバイオリン弾きは
街灯に影がくっきり映るのに
その姿を見た人はいないらしい
パン屋の女主人が
スパイ容疑をかけられて
町の広場で銃殺される
好奇心に満ちたヤツらは
それを見に押し寄せる
ぼくはそれをただただ見ていた
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