五月の街/前田ふむふむ
木曜日の朝の雫が絶叫をあげている。
尖った街頭の佇まい。
通勤の熱気をはおったDNAのひかる螺旋の群は、
わたしの散漫な視覚のなかに、
同じ足音、同じ顔を描いていく。
振子のようなまなざしは、止まらない。
やはり、わたしは、携帯電話を開いて、
長方形のひかりの窓に、全身を浸して、
夢想してしまう。
閃光に晒されて、
ひとり、寡黙に停泊するヨットにだけ、
海鳥が、白い羽を仕舞っている。
わたしは、仄かに潮の香る心象をかぶり、
群青にとけてみる。
ひかりにゆれる海の、吹き寄せる風にからまれた、
透明な巻貝のなかにひ
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