おいのり/紅魚
すすきヶ原が風の形に擬態して、
空気は
しゅわしゅわと微かなあぶくを吐いている。
どこかの家から、
ほくほくと夕餉の匂い。
紫紺の空は、
星がまたたく一瞬前の緊張を孕んで、悠々。
あたし、猫、
ふたりぼっち。
セイタカアワダチソウの群生を、
息停めて、歩く。
あの薔薇線の向こう、
切り崩された赤土の小山の、
端から三本目。
大きな大きな神様の木。
お供えをすれば願いごとが叶うんだって
小さなあたしは信じていて、
あの頃、
うろには、
どんぐりとか、
花だとか、
捧げものがたくさん詰まっていた。
秋の風にスカァトくるり、
ポケ
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