夕暮れの家族たち/いねむり猫
 

5月にしてはたくさんの雨が降った夕暮れ
その古びた小さなホールに、傘を差しながら集まってきた人々

住宅街の中にあるその建物は、粋な服装をした紳士のように
風格としゃれた遊びが調和している

過酷な仕事を切り上げてきたサラリーマン
洗練された週末を過ごそうと意気込んでいる若い女性たち
早くも大人の気配を漂わせている小学生を連れた母親
静かに寄り添っている初老の夫婦

都市の過剰な刺激の中で 熱く肥大してしまった魂を
この小さな聖域とやがて始まる音楽が 
生き返らせてくれるはずだから 

舞台の奥の壁、その向こうで、あのすばらしい演奏家が最後の調弦をしている

同じものを求めて集う、見ず知らずの人々は
家族のように肩を寄せ合って待っている

さあ 

演奏が始まる

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