鬼婆の髪/三州生桑
 
「鬼婆の髪を見に行きませんか」
ローカル新聞社の記者から電話があった。
「或るお寺にですね、鬼婆の髪があるんですよ。そのルポを書いていただかうかと」
「インチキなんぢゃないの。拝観料とか取るのか知ら」
「いえ、誰にでも見せてくれるさうですよ」

その記者と連れ立って、件の寺を訪うた。
「立派なお屋敷だな。坊主まる儲けだね」
呼び鈴を鳴らすと、のそりと禿頭の老人が出て来る。昼間なのにパジャマを着てゐる。
「先日お電話した者ですが、鬼婆の髪を見せていただきに参りました」
「ああ・・・、ああ・・・」
老人の緩んだ口から、よだれが垂れる。
「ああ・・・、ぢゃ、本堂の方へ・・・」

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