*浮き島/チグトセ
 
が五月蠅い。プロペラの音が五月蠅い。傾いだ地面が見えた。寺内のよれたシャツが見えた。脛に渾身の蹴りをくらい衝撃で僕は倒れた。寺内も倒れた。手を伸ばし寺内の髪の毛をつかみ取った。引き落とし、寺内の顔面を思い切り砂利に叩きつける。シノが悲鳴を上げる。
何度も叩きつけるうち、寺内の体がだんだん柔らかくなっていくのがわかった。力が抜けてきたのだ。もう一息だと思った瞬間、シノに後ろから抱きつかれ、思わず手を離してしまった。
「もうやめて……やめなさい、もうやめなさい……」
シノは涙声で繰り返し、僕は体を起こして尻もちをついた。寺内は、震える肘を砂利に突き立て、土と血と涙でぐちゃぐちゃに塗られた顔
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