幼子が去った後には/いねむり猫
心地良い音を立てて流れる小川に
5月の光が溶けてはじける
その中にひらめく小さな魚の影
黄金色の川底の砂に等間隔の影を落とす小さな群れ
風が作る小川の波紋に揺られて
魚の影もゆれる
この静謐のまれな訪れ
でも、幼子なら、小川の光の冷たさと魚たちのしなやかな感触を求めて
迷わず流れの中に手を差し出すだろう
そして蹂躙され濁った流れは、やがて静寂の音楽を取りもどす
気まぐれな幼子が去った後に
魚たちを驚かせるのは、遠い遠い雲の、流れる影だけ
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