幼子が去った後には/いねむり猫
 

心地良い音を立てて流れる小川に
5月の光が溶けてはじける

その中にひらめく小さな魚の影
黄金色の川底の砂に等間隔の影を落とす小さな群れ

風が作る小川の波紋に揺られて
魚の影もゆれる

この静謐のまれな訪れ

でも、幼子なら、小川の光の冷たさと魚たちのしなやかな感触を求めて
迷わず流れの中に手を差し出すだろう

そして蹂躙され濁った流れは、やがて静寂の音楽を取りもどす

気まぐれな幼子が去った後に
魚たちを驚かせるのは、遠い遠い雲の、流れる影だけ


戻る   Point(1)