口誦さむべき一篇の詩とは何か/んなこたーない
のならば、自分が論駁されたときは素直にそれを認めなければならない。
ヒットラーの「わが闘争」ではないが、感情を理屈で粉飾するのは二重に悪質な行為である。
ここまで書けば、ぼくの矛盾は明らかである。この矛盾は次のように質問すればより明きからになる。
「それではあなたにとって詩の効用とは何なのか」
もっと簡単に、それでは詩は悪質な行為なのか、と問うこともできる。
たとえばぼくは次の文章をどう読むだろうか。
親愛なるX……。詩について考えることは、とりも直さず僕達の精神と君の精神とを結びつける
架橋工作である。たった一人の君に語りかけるために、僕達が力を併せて荒地を形成している意味
を理解してくれたならば、僕達各個人が如何に分裂し、模索の方向を異にし、未明の混沌とした内
乱状態にあろうとも、なお一つの無名にして共同なる社会に於て、離れ難く結び合っていることも、
より一層深く理解してくれるだろう。
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