アメアガリ/チグトセ
んかないよ
ねえずっと、遠慮と強欲、ばかりだったね
二人の
ちぐはぐなやりとりはいつだって完成したことがなかった
開いている目が乾いてきた
灼けつくタイヤの匂いと
今のぼっていこうとする階段
石畳の隅に挟まった名前のない音と
そこに貼り付いたまま動かない影
ビルに収容された奥様が談笑している
傍を少年が繰り返し歩いている
そこには並んで飽和したベランダの洗濯物と
白んでいく昂翼と
逃げ場を失った龍と鳳凰と
雲に運ばれていく鳥
それを運んでいく雲
ざわめく木々は風に揺られ
ざわざわ葉擦れ、ぼやけた
遊覧飛行の虹
戻る 編 削 Point(9)