「 彼女の触手は濡れている。 」/PULL.
 
で体毛がない。
どこもかしこもつるりとしていて、
まるでナメクジのようになめらかだ。
彼女はなめらかな「彼。」に触手を伸ばし、
味わい、
愛撫する。

魚のように開いた口から、
彼女は、
そこから、
ぼくに入ってくる。
穴という穴から、
彼女はぼくに入ってくる。
内蔵の底で、
彼女の喘ぐ声がする。

「彼。」が、
きいきいと声を上げ、
彼女の触手に歯を立てる。
ひとくち囓るごとに彼女は、
濡れて、
ぼくの内蔵を熔かして、
ゆく。

ぼくたちは、
こうして、
愛し、
ひとりになる。












           了。


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